Makoto's Blog (まこログ)

英国在住23年目のR35♂ その日ごとの時事ネタを取り上げて呟いたり。

英国テロと総選挙への影響は?

来たる6月8日に英国で総選挙が実施されます。

 

あれ? ついこの間騒いでなかったっけ?と思った貴方。

 

去年の6月23日に行われたのはBrexit(ブリクジット)の是非を問う国民投票

早くも1年が経とうとしてるんですね。

 

逆に見るなら一年経たずにまた国を挙げた政治ショーをやってる訳ですし、この一年の間にあったアメリカ大統領選やフランス大統領選など世界のあちこちで国に方向性を決めるような出来事があったので世界の政治に於いては転換期だったかもしれません。

 

実は今回の総選挙は2015年5月に当時のキャメロン政権が大勝して保守党の長期政権を盤石にしたのだと思った矢先で本来5年任期なのを3年前倒しにしての総選挙。

 

2015年にキャメロン元総理が続投を選んだ時の総選挙は与党が議席を伸ばすと言う記録的勝利だったのが真新しい。

(記録を辿ると基本、政権が続投する際には議席を減らすか長期政権になる前に政権交代が起こるのが英国議会に於けるトレンドであった)

 

では、今回メイ首相は何故任期を3年も前倒しにしてまで電光石火の如く総選挙に踏み切ったのか?

 

表向きではBrexit交渉を有利に進める為です。

 

与党といえど当時EU脱退の是非で党内が真っ二つに割れていた。

 

離脱反対の旗印となっていたキャメロン元首相

離脱推進の筆頭格だったのも同じ与党のボリス氏

 

結果は、移民問題の火種が燻りつつ不満を抱えていた貧困層に耳を傾けていると言うアピールに成功したボリス一派&UKIP(イギリス独立党)の戦略勝ちで僅差ではあるが離脱への道を選んだ。

 

引責を取る形でキャメロン氏が辞職したが、後釜にと有力視されていたボリス氏が党首選挙に際に足を引っ張られる形となり撤退。 国民投票の際、明確な態度を示していなかったら重鎮のメイ氏が引き継ぐ形となった。(実はメイ氏本人もEU離脱を望んでいなかった)

 

これらの事から、今回の総選挙で与党保守党はbrexit国民投票を受け入れ一枚となって交渉に臨むと言う決意表明をした形で行われる選挙。

 

謂わば、"ブリクジット解散"である。

 

(日本だと小泉元首相が行なった"郵政解散"みたいなもだと思う)

 

選挙の争点を単純かつ明確にしている。 この結果如何では再度国民投票を行おうと未だ叫んでいる外野を完全に黙殺することができるからだ。

 

もう一点は、メイ氏自信の信任を問うた選挙でもあると言う事。 

 

 

話は変わりますが、英国では立て続けにテロ事件が起きています。

 

5月22日はマンチェスター

そして先日6月3日にロンドン橋周辺での事件(3月22日の国会議事堂襲撃も記憶に新しいと思います)

 

実にここ3ヶ月の間に3件ものテロに関連した事件が起きています。

何も犯人グループは英国に移住した移民の二世三世です。

 

これら一連の事件が8日の総選挙にどのような影響を与えるか?

 

率直な意見としては"影響はほとんど無い"と見てます。

 

6月に入った時点で与党が過半数を取る勢いが続いていて、支持率の推移を見てもそれを後押ししています。 最も5月後半から最大野党の労働党が巻き返しを図ってるように見えますがいざ蓋を開けたら議席を減らすのは間違いないと思います。

 

実は英国の支持率調査はアテにならないので有名で去年の国民投票でも全ての出口調査で離脱反対が優勢と報道されていました。

 

理由の一つが、英国は各メディアがどの政党を応援しているかを明確にしている点です。 

 

日本みたいに表明してないのに明らかな偏向報道をする位なら最初から明言しておけば済む話です。 

 

これによりメディアによるプロパガンダが国民にもたらす影響が少なくなります。

 

そしてこれが一番の理由と個人的に思っているのですが、イギリス人は個々にしっかりとした政治への信念を持っています。

 

昨年の国民投票実施数日前に離脱反対側の議員が狂信的な愛国者に殺害される事件があり、海外メディアでは優勢を報じられていた離脱反対派に更に同情票が集まるのではという報道がありました。 しかし、結果はご存知の通り。

 

英国人は外野からの声に一々惑わされる事がありません。 自分で考えて良かれと思って行動する傾向が強いからです。

 

先程、"ブリクジット解散"と表現しましたが、無論移民問題を始めとした国内の問題にも言及しています。

 

本来このような大きな事件があった場合、フットワークの軽い小さな政党(第3政党的)が台頭するチャンスですが今回の総選挙においてはそれも無いでしょう。

 

UKIP(イギリス独立党)がこう言った時の受け皿として最有力候補だったのですが、Brexit決定後に党首交代から投票後の対応で"煽るだけ煽って何もしていない"と言うレッテルが貼られつつあり求心力の低下があります。

 

潜在的なukipに賛同する国民は相当数居るのですが、実際選挙となると似たような公約を掲げている大きな政党(この場合は与党)がいると妥協してほとんどがこちらに流れてしまうからです。

 

同時に、票が割れる事で移民政策に未だ寛容でいようとする最大野党の労働党に益になるのを避けようとする心理も働きます。

 

どの選挙区でも手堅い一定数の票は入るのですが、議席を取るまでに至らないのが現状です。

 

他の野党を見ると、Liberal Democrats (自由民主党)は党首が変わってから迷走ぶりが激しく党首はスピーチをする度に"国民投票をやり直すべき"と未だ高らかに叫んでいるので今回の総選挙でそれも収まることと思います。

 

SNP(スコットランド国民党)は寝ても覚めてもスコットランド独立を掲げている政党なので今回のbrexitにも反対しています。 ここはスコットランドの若年層や貧困層を主とした固定票があるので大きな変動はないでしょう。

 

英国は実に外交的に強かな国なので結果的にEU脱退は間違ってなかったと思える日が来ると私は思っていますが、やはり何よりも大事なのは国内の政治と懸念を安定させることだと思います。